だいちゃんという少年とネコの物語と言えば、「いなかっぺ大将」というマンガ・アニメを思い起こす人もいるかもしれませんが、全く無関係の絵本ですから。念のため。
著者のやまもとまつこさんの物語に対する愛情が感じれられる、心あたたまるお話しです。
この絵本、主役は「だいちゃん」ではなくて、ネコです。
お話し自体は、飼い猫が動物園で人気者になっちゃたり、TVに出たり、新聞に取り上げられたりするという、いわばまあ、他愛のないお話です。
しかし、だいちゃんとネコの「友情」みたいなものが、絵本全体の流れを貫いていて、無理がないというか、終わりまで微笑ましく楽しむことができます。
うちの下の子が、1歳半前後から、この絵本にハマッてしまい、どんなに泣こうがわめこうが、「だいちゃんのちびねこ」を読み始めると泣き止む、という非常に貴重で便利な絵本でした。
でも、この絵本、読むのに7~8分かかるんですね。
普通、1歳半だとこのレベルのストーリーにはついていけないと思うのですが、話しの展開の面白さに惹かれるようで、集中力を持続して楽しんでいたのが印象的でした。絵も、ほんわかと優しい絵なので、まだ小さい子にも、試しに読んでみてあげたら、うちの子みたいにハマるかもしれませんよ。
たぶん、「なんでもはんぶんこ」「なんでもいっしょ」という、ネコとだいちゃんの生活に、小さな子ども達は、非常に憧れを持つのだと思うのです。
家庭の中に、対等でありつつ、いつでも一緒に遊べる信頼できる仲間が欲しいという、願望があるんじゃないですかね。親とも違う、兄弟とも違う、自分の分身のような存在が。
私としては、最後の大団円というか、ハッピーエンドというのは、甘いと言えば甘い結論だと思います。何もかも、一番幸せな時期に元通りっていうことは、上手い話は世の中にはほとんどないですからね。
でも、子ども達がこれを読んで、人生の未来に希望を感じるというか、世の中は見捨てたもんじゃないんだと感じてくれればいいな、と勝手なことも思っています。
裏表紙の裏のだいちゃんとネコの絵は、お話しが終わったあと、裏表紙を閉じる前に、是非、子どもと見てください。この絵本の良さの全てが収まっているような、いい絵なのです。
それから、やまもとまつこさんが書いた「あとがき」を読んでいただくことも、是非、お奨めします。この絵本の良さを、きっと再確認できると思います。
優しさと笑いと悲しみと友情と、色々盛りだくさんの心温まる絵本なのです。