いわずと知れたマーガレット・ワイズ・ブラウンの絵本は、どれから書こうか迷いましたけれど、やはり、珠玉のこの1冊、「おやすみなさい おつきさま」でいきます。
この絵本、カラーのページ、白黒のページ、見開きのページ、左右に別の絵と様々な組み合わせで展開していきます。
言葉遊び的な要素も含みながら、徐々に子どもを誘っていく文章ですが、絵の方も、遠景とアップを交互に入れて、細かい遊び心をちりばめています。
まず最初に気がつくのはネズミでしょうか。それとも時計でしょうか。それから、おばあさん。子猫たち。そして月の動き。ベットにいる子ウサギかな。
布団やベットの中で、子どもに読み聞かせるのに相応しい落ち着いた内容であり、夢の世界に静かにスムーズにいざなう話しの展開です。
ちょっと気になるのは、お話しの中の部屋の壁にかけてある3枚の絵のうち、2つの絵、「めうしがおつきさまを飛び越している絵」と「さんびきのくまがいすにこしかけている絵」は紹介されているのですが、残りの一枚、「ウサギが川でつりをしている絵」の紹介はないこと。
シュールさでいったら、こちらのほうが一枚上のような気もしますが。是非、ご鑑賞を。
他にも、本棚や虎の毛皮の存在、黒電話も気になります。
マーガレット・W・Bが、なぜこれらの興味深い「アイテム」にお話しの中で触れていないのか、不思議。それとも逆に、クレメント・ハードのオリジナリティなんですかね、この辺が。
「おやすみ、○○」という言葉が繰り返され、徐々に深夜の気配が深まる。
それにしても、「おやすみ だれかさん」という言葉と空白のページの余韻は、何度読んでも話しの流れに深みをあたえているなぁ、と関心します。
そして最後の一語。「おやすみ そこここできこえるおとたちも」という言葉が、子ども達にとっては、魅力的でありつつも畏怖の存在である深夜というものを表現しているようで、感心します。
音無き音、というものが耳の奥に忍び込んでくるようです。
一時期は、我が家の「ねんねの一冊」を独占し続けたこの一冊。
せたていじさんの日本語訳がさりげなく光る、子どもに魔法をかけてくれるような絵本です。